「杉並区」不動産投資

東京都の特徴として、同じ区内の投資物件でも地域によって大きな価格差がみられることがあげられます。

特にターミナル駅周辺、ビジネス街、集客力の高い商業施設などがあるエリアは一気に地価が跳ね上がる傾向にあります。

こういったエリアで不動産投資を行う場合、区分所有であっても多くの資金が必要になります。

確かに資産価値が高く、将来的な出口戦略を考えてもメリットが大きのですが、キャッシュフローを第一に考える方にはこういったエリアでの投資は適さないケースがあります。

要は物件が高額のため利回りが低くなってしまい、その結果としてキャッシュフローはあまりよくない状況になることがあります。

つまり不動産投資をする上で何を優先するかによって、投資物件も変わってくるのです。

しかし投資目的はどうあれ、物件を購入するのであれば、投資エリアの調査は必要不可欠になります。

そこで投資物件の選定に必要な情報として、地域の特性、将来人口推移、地価の動向、賃貸需要について調査してみました。

なお今回は「杉並区」を調査しましたので、投資先として参考となる情報がありましたらご活用下さい。

まずは杉並区の概要、特性から考察していきましょう。

杉並区の概要、特性

杉並区は23区内で人口6位、面積8位の区です。また所得水準は全国15位(都内10位)と高く、久我山、浜田山などは都内で有名な高級住宅地ではないでしょうか?

ではまずはじめに、不動産投資におけるもっとも大きなリスクのひとつである空室リスクに関連する空き家率から見ていきましょう。

杉並区の空き家率は10.3%となっていて、東京平均(11.2%)と全国平均(13.5%)よりも低く、比較的優秀な数値であることがわかります。(平成25年住宅・土地統計調査より)

これは不動産投資を行なう上で、プラス材料になるかもしません。

では安心して暮らせる街であるかどうかの基準である犯罪率を見ていきましょう。

東京は全国的に犯罪率が高い都市として有名ですが、杉並区の犯罪率は1.25%(全国平均:0.9%、東京平均:1.83%)で23区内で4位になり、この数値から杉並区が治安の良い街であることがわかります。

次に子育て世帯が住みやすい街であるかのひとつの指針になる待機児童について見ていきましょう。

東京は全国的に待機児童率が高い都市として有名ですが、杉並区の待機児童率は1.35%(東京平均:4.08%)で23区内で5位となり、この数値から杉並区は子育てがしやすい街であることがわかります。

次に杉並区の人口について考察していきましょう。

杉並区の不動産価格

次に杉並区の不動産価格の動向について見ていきましょう。

まず杉並区の地価は、東京都内14位、全国15位となっています。1992年の最も高い坪単価約550万円前後でしたが、2016年現在は1/3程度の181万円前後で推移しています。

では最近の地価の変動を見てみましょう。

2005年から2008年の4年間の地価は上昇しています。特に2007年(9%以上)、2008年(6%以上)と比較的大きな上昇となりました。

その後、2009年から2012年の4年間は下落に転じ、2009年(10%以上)と2010年(6%以上)は大きく下落しました。

そして2013年から2016年にかけて上昇に転じていますが、大きな上昇ではありませんでした。

なお杉並区の2016年の地価は前年比プラス0.5%前後とほぼ横ばいに近い上昇でしたが、杉並区を27エリアに分割した地域別の2016年データでは、19/27と多くのエリアで地価が上昇しています。

なお坪単価の最高値は荻窪エリアの約220万円(前年比約1.8%UP)、最安値は上石神井エリア(前年比約0.2%UP)の約129万円となります。その差は1.7倍程度と大きな格差は見られません。

2016年に杉並区で10%以上大きく上昇した地域は見当たらず、三鷹台エリアの約8.7%が最高の値上がり率となっています。

また下降した地域は阿佐ヶ谷、高円寺、南阿佐ケ谷、浜田山、鷺ノ宮、高井戸、芦花公園、下井草の8エリアとなります。

そして10%以上のマイナスは南阿佐ケ谷エリア(約-12%)のみで、その他のエリアは0.1~3.2%未満の小さな下げ幅となります。

杉並区の平均地価は181万円程度ですが、最高値と最安値の地域差が100万円程度しかないとっいた、大きな価格差のない地域となっています。

そのため賃貸需要の見込めるエリアを選定できれば、費用対効果の高い投資が可能になります。

また周辺環境や利便性に優れた物件を発見できれば、他物件と大きな差別化を図れる地域と言えるかもしれません。

また賃料相場は都内17位となっていて、地価の14位よりも低いため、割高感のある物件をつかむ可能性があるため、物件の選定に注力しなくてはならないでしょう。

杉並区の人口推移

 

杉並区の人口動向について調査しました。直近5年と過去抜粋データが下記となります。※()は外国人登録者数。

2016年:553288人(12798人)
2015年:547165人(11421人)
2014年:542956人(10709人)
2013年:540021人(10489人)
2012年:527675人
2007年:519229人
2002年:508748人

2002年から2016年までに2.7万人近く増加していて、2002年と2016年比較すると14%以上の人口増加となります。

また戦後からの長いスパンで見ると、昭和50年をピークにそれ以降平成9年まで減少に転じました。

しかしそれ以降は増加に転じ、平成21年~平成24年までは大きな増減はなく、平成25年以降は比較的大きな増加を続けています。

では今後の人口推移はどうでしょうか。下記は国立社会保障・人口問題研究所による2020年~2040年までの杉並区の人口将来推計となります。

2020年:536457人
2025年:522578人
2030年:505876人
2035年:486327人
2040年:464151人

2020年にはすでに減少に転じ、2040年に至るまでずっと減少することが予想されています。

なお2020~2040年の20年間で7.3万人程度の人口減少で、2020年から13%程度の減少となります。

しかし杉並区では人口減少、少子化の対策として、出生率の向上、人工構造変化への対応(生産年齢人口)、選ばれる街選びなどの取り組みを行なっていきます。

この成果により人口減少がどこまで抑えられるのか注目していたいところです。

杉並区の交通・アクセス

では杉並区の電車状況はどうなっているでしょうか?

まずはJRから。JR総武線、中央線の利用が可能です。停車駅は下記となります。

・JR総武線、中央線:荻窪駅、高円寺駅、阿佐ケ谷駅、西荻窪駅

次に地下鉄。地下鉄は東京メトロ丸ノ内線の利用が可能です。

停車駅は下記となります。

・東京メトロ丸ノ内線:荻窪駅、高円寺駅、南阿佐ケ谷駅、東高円寺駅、方南町駅

そして私鉄は、京王線、京王井の頭線、西武新宿線の利用が可能となります。

・京王線:八幡山駅
・京王井の頭線:西永福駅、高井戸駅、久我山駅、浜田山駅、永福町駅、富士見ケ丘駅
・西武新宿線:井荻駅、上井草駅、下井草駅

複数路線が利用できる駅は、荻窪駅、高円寺駅となります。

杉並区で行う不動産投資の将来性

これらのデータを元に杉並区は不動産投資エリアとしては適しているのか考察してみましょう。

まず人口から。

国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、ピーク時の人口から2040年までには10万人近い減少が予測されています。この数値は少なからず不動産投資にマイナスの影響をもたらすことが考えられます。

しかし杉並区は人口の減少問題に対するさまざまな対策を打ち出して、積極的に取り組んでいるため、この予測数値がどのように変化するかは定期的に観測する必要がありそうです。

また良い条件の投資物件があれば、行政の取り組みが上手くいき、人口問題が解消されることを期待して購入するのもひとつの選択肢と言えるでしょう。

では交通に関してはどうでしょうか?

人気路線である中央線の利用が可能で、国内随一のターミナル駅である新宿駅までのアクセスもよく、また地下鉄、私鉄の利用も可能なため非常に利便性が高い地域と言えます。

また複数路線が利用できる荻窪駅、高円寺駅がありますが、ともにJR+地下鉄の利用可能です。

地価に関しては、23区内で中間グループに位置するのが杉並区です。地域による地価の格差は少なく、荻窪・阿佐ヶ谷・笹塚・高円寺周辺は人気、利便性の割には地価は安いと言えるでしょう。

また東京女子大学、高千穂大学、明治大学があるため、エリアを絞って学生を対象とした賃貸ビジネスの需要も見込めるかもしれません。

また杉並区のエアビーアンドビー民泊物件の登録数は23区内で中間に位置しますが、あまり注目されている地域とは言えないようです。しかし利便性を考えれば、物件のアピール次第では高稼働率で運用できる可能性もあるでしょう。

これらの情報を総合すると、杉並区は居住環境、交通、地価に強みを持っていると言えます。

そのため、杉並区は投資エリアとして問題が少ない地域と言えるのではないでしょうか?

※人口データは杉並区資料、国立社会保障・人口問題研究所、土地価格は土地代データ、不動産データはスマイティ参考に記事を作成しています。